労働時間・休日・休暇
1 時間外労働手当  2 振替休日と代休  3 転籍出向

1 時間外労働手当

通常、労働者が法定時間外労働をした場合、使用者は通常の賃金の2割5分増以上の割増賃金
を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。

但し、営業社員、長距離トラックの運転手、タクシー運転手等時間外労働の時間数の算定が困難であ
る業務があります。このような業務内容の労働者に対しては割増賃金に代えて一定の手当の支給又は
割増賃金分を通常の賃金に含めて支給することも可能です(大阪地裁昭和63年10月26日他)。

 トラブル予防のためのポイント
ただ、割増賃金分を通常の賃金に含めて支給する場合、どの部分が割増賃金に相当するか区別できる
ものでなければなりません。なぜなら割増賃金分を通常の賃金に含めて支給する場合であっても実際
に労働した時間外労働の割増賃金がその通常の賃金に含まれているとされる割増賃金分を超えた場合
、使用者がその差額を支払う必要があるからです(最高裁平成6年6月13日)。
従って、割増賃金分を通常の賃金に含めて支給する場合、給与明細書等に通常の賃金と割増賃金分を
区分する必要があります。なおこれは割増賃金に代えて一定の手当の支給の場合も同じです。

このような解釈から、割増賃金に代えて一定の手当の支給、割増賃金分を通常の賃金に含めて支給す
るといった方法をとると給与計算事務については合理的ですが、賃金額の削減といった問題ではメリ
ットはありません。
お、これらは時間外労働手当だけでなく、休日労働手当、深夜労働手当も同じ考え方です。
また、使用者が労働者に対し、時間外労働、休日労働をさせる場合、その前提として労働者代表との
三六協定の締結並びに労働基準監督署への届出が必要になります。
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2 振替休日と代休

+ 振替休日
業務の都合上、使用者が本来の休日に労働者を出勤させ、代わりに所定労働日に労働者を休ませる
ことをいいます。
この場合、割増賃金の問題は発生しません。

ここで注意すべきことは、いったん定めた休日を変更するわけですから、その根拠となる就業規則
の規定が必要です。
また、振替である以上、あらかじめ振替休日が特定されている必要があり、さらにそれが労働基準
法第35条の範囲内(毎週1回以上又は4週間を通じて4日以上)であることが必要です。
(横浜地裁昭和55年3月28日)。

なお、使用者があらかじめ振替休日を特定しないで休日労働を命じた場合、後日休日を与えたとし
ても、この場合は後で述べる代休とされ、割増賃金の支払が発生します。
(後日休日を与えようが与えまいが代休の場合、割増賃金が必要です。)

+ 代休
労働者が休日出勤後、休日出勤の代償として使用者が別の日に休日を与えることをいいます。
この場合は休日の振替ではありませんので、就業規則への休日労働がある旨の記載、三六協定の締結
労働基準監督署への届出及び割増賃金の支払が必要です。

 トラブル予防のためのポイント
このように振替休日と代休は似ているようですが、その法的性質は全く違います。
使用者が振替休日と認識していても、振替休日の特定等が不十分で、結果として割増賃金を支払わな
ければならないといったことのないようその違いを理解する必要があります。
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3 年次有給休暇

最高裁(昭和48年3月2日)は、年次有給休暇の成立について次のように述べています。

@労働基準法第39条第1項(6箇月間継続勤務、全労働日の8割以上出勤)の要件を満たした労働
者は、当然に10労働日の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負う。

A労働者が年次有給休暇を取得するにあたり使用者の承諾は不要である。

B労働者が休暇の時季を特定したときは、使用者が適法に時季変更権を行使しない限り、労働者の時
期の特定によりその特定日における就労義務は消滅する。

C年次有給休暇をどのように利用するかは労働者の事由であり、使用者の干渉は許されない。

D労働者が所属事業場において業務の正常な運営を阻害する目的で全員一斉に休暇を取得する行為は
年次有給休暇に名を借りた同盟罷業(ストライキ)であるからこれに参加した労働者に賃金請求権は
発生しない。

このように、年次有給休暇は請求によって始めて発生するものではなく、労働者の時季指定により当
然に発生する権利です。
使用者としては適法な時季変更権のみ権利として認められています
(労働基準法第39条第4項但書)

**** 時季変更権
時季変更権とは、労働者が年次有給休暇の時季指定請求をした日又は期間が、使用者の事業の正常な運営を妨げる
場合において、使用者は他の時季にこれを与えることができるというものです。
ただ、この時季変更権も使用者にとって制約があり、ただ単に繁忙であるといった理由では認められません。
(大阪地裁昭和33年4月10日)
仕事内容、代行者の有無等総合的に判断する必要があります。

 トラブル予防のためのポイント
使用者はできうる限り労働者が指定した時季に年次有給休暇が取れるよう配慮する必要があります。
(最高裁昭和62年7月10日)。
このためにも普段から年次有給休暇取得時への体制を整える必要がありますが、やむを得ない理由が
ある場合を除いて、年次有給休暇の請求は一定期日前までに行うこととの規定は勤務割の変更や代替
要員確保のために必要であれば、合理的範囲内である限り適法とされています
(最高裁昭和57年3月18日)
年次有給休暇取得への体制を整えるためにも活用したいものです。
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